証拠収集
医療事故における事実経過や行われた医療、患者の状況等について、最も重要な証拠となるのは、やはり診療録です。
診療録は法律に基づき作成・保存することとされており、医療事故等を巡るトラブルが顕在化する以前の段階で、日常業務として作成されることが通常であるため、一般的には高い信用性を有するものとされています。
時折、法律相談において、「カルテには嘘ばかり書かれている」といった相談を受けることもありますが、実際に診療録に記載されていることと異なる事実関係を主張・立証するためには、相応の根拠を示す必要があることが多いと言えます。
診療録については、患者さん本人や患者さんが死亡した場合の遺族などが、医療機関から任意に開示を受けることによって入手することがもっとも簡便な方法です。
偽造や改ざんのおそれがある場合などでは、裁判所の証拠保全手続を利用することもあり、これを原則とすべきと言う意見もありますが、保全の必要性を証明するハードルは相応に高く、また多額の費用を要するため、証拠保全手続によるかどうかは慎重に検討する必要があります。
診療録以外には、診療にあたった医師とは別の医師の意見や、医学論文なども重要な証拠となります。